やどかり
オナラが恥ずかしくなったのは
いつからだろう
涙隠すようになったのは
いつからだろう
嘘をつけるようになったのは
いつからだろう
裸が恥ずかしくなったのは
いつからだろう
そうやって守りぬいたこの僕も
結局最後は消えてしまうのに
お金が欲しくなったのは
いつからだろう
他人が羨ましくなったのは
いつからだろう
誰かを嫌いになったのは
いつからだろう
見えないものまで欲しくなったのは
いつからだろう
そうやって手に入れたものもすべて
結局持ってなど逝けないのに
だから せめて今は持って行こう
両手にできるだけ持っておこう
その数がきっと僕のこと
教えてくれる気がするから
夜眠れなくなったのは
いつからだろう
あの星の居場所を知ったのは
いつだったろう
子供から大人になったのは
いつなんだろう
いつか僕も消えると知ったのは
いつだったろう
語る想い出ができたのは
いつからだろう
失くせないものができたのは
いつからだろう
二度と「今」は来ないと知ったのは
いつからだろう
知らないことがあると知ったのは
いつだったろう
そうやって手に入れた いくつもの何かを
遺して僕は消えゆくけど
だから せめて今は持って行こう
抱えきれないほど持っておこう
そのすべてが今のこの僕を
形作っているものだから
そのすべてが 今ここに僕が
存在したことの証だから