箱庭鏡
もう君と歩くこの景色は
どこにも見つけられないんだなあ
ああ 歩き慣れて見慣れるほど
こんなにも懐かしく感じる
煤けたような教室の匂い
消せず滲んだ机の落書き
擦りむいた赤 砂の感触
見下ろした青 夏の隙間
誰かにもっと愛されたくて
誰でもいいや 嫌いになって
傷つけ合って 慰め合って
それでも全部愛しくてさ
君と思い出は
校舎の曲がり角の向こう
窮屈な箱庭の隅で
弾けて飛ばしたボタンと存在証明
もう一度自由でいよう もう一度
君とあの日に戻れるなら
解けない問題を飛ばせなくなって
それで気づいたんだ 大人になったんだ
日陰を踏んで歩いた道も
河原にあった光る小石も
また見落として やっと気づいた
大人になったんだ
嫌いなものは嫌いでいたいよ
知らないものは知りたくないよ
君と世界を小馬鹿にしたいよ
黄昏に消える その前に
君と待ち合わせ
放課後屋上の夕焼け
何もかもを着崩して
かかと潰したローファーと将来設計
いつまでも他愛ない話をしよう
窮屈な箱庭の隅で
弾けて飛ばしたボタンとそんな毎日を
もう一度
君とあの日に戻れるなら