五年目の手紙
Takao Horiuchi, Shinji Tanimura
私は今も変らずに
会社勤めの毎日です
服を着がえていそいそと
家路を急ぐ人の群れに
まぎれて一人帰る道すがら
白い封筒を買いました
たいした意味などないけれど
あなたがくれた一枚の
燃えてた頃の手紙だけ
机の隅に入れたまま
今夜はペンをとりました
書き終えた便せんの追伸に
「今でも私は」と書けなくて
そっと破いて捨てました
真夜中に一人吹く口笛を
叱ってくれる人もなく
五度目の冬が過ぎました