45階だての夕暮れ

文 尾上

夕暮れ 45階だての窓から見る
夕陽は とてもセクシーだ。
世界中の美女たちを ありったけ
山積みにしたよりも ずっと
僕は 電話を
留守番コールに 切りかえて
エレベーターに乗る。
昔なつかしい Popular Musicを
口ずさみながら
少し煙った街
僕は スタンドバーに 車をとめて
メキシカンチリを 注文する
彼女が いなくなってから
毎日が こんな暮らし
一人でいることは
とても気ままだけど
ちっとも自由って気がしない。
カウンターごしに 聞こえる
男たちの 会話
テーブルに 広がる 僕の時間

ねえ、もう一度
いっしょに暮らさないか。
部屋は まだ昔のままだし
それに お互い もう 若くない。
僕は受話器を置いてから、
そう、君に話しかける。
あのさ、もしもだよ。
僕らの記憶が すっかり消えて
しまって
もう一度 どこかの街角で
ばったり出会ったりしたらさ
やっぱり 恋をするんだろうか。

夕暮れ 45階だての窓から見る
夕陽は とても セクシーだ。
今すぐにでも、僕のすべてを
変えてしまうくらいに。
そろそろ、君の誕生日だな。

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