薔薇架刑
アリカ 宝野
もしもわたしが仄蒼き薔薇なら
肉体は綻ぶ花でしょう
添い寝する駒鳥たち
刺で抱きしめ
甘き蜜を引きかえに
生き血を注がせ赤く赤く
月を浴びて燦燦と
盛りの刻を立ち止まらせて
祈りのように 呪いのように
開いた花唇の奥底で唄う
そうまでもして咲き誇るのかと
問うなかれ
もしもわたしが野に咲いた薔薇なら
心は蠢くその根でしょう
土深くに亡骸を
幾つ数えて
闇に染みし濁る夜露
貪り尽くし吸い尽くして
朱い茎を昇りつめ
光の在処 探りつづける
天女のように 獣のように
堕ちていく場処は墓穴と知れど
それほどまでに愛したいのかと
問うなかれ
枝を巡り 葉を滲ませ
自らの身を架刑とせん
月に潜み煌煌と
わたしは薔薇でわたしは女
呪いのように 祈りのように
秘する想いは薫りつつ爛れ
そうしてなおも生きてゆくのかと
問いながら