朗読する女中と小さな令嬢
宝野アリカ
最後の朗読をしましょう
お嬢さま
いつものように暖炉の前
人形抱き 凭れ
お聞きなさいませ
妖精 スミレ
冠 お城
きれいで気高い王女なら
茨の鎖に巻かれても
かならずや
ほどかれる
お屋敷 嵐
オオカミ 暴動
木の棒 打たれて叫ぶのは
火の粉に 焼かれて呻くのは
誰でしょう
おいたわしい
夜毎お聞かせした童話を
お嬢さま
いつまで憶えておられよう
私はもう今宵限り
忘れます
夜明けには
黒い馬車が迎えにくる
あなたの一族を乗せるために
止められない物語
歯車を回し