名なしの森
一年中咲き乱れる
薔薇の園で暮らせたなら
わたしたちだって
少しも変わらずに
時をのぼって行けるかしら
物を言わぬ庭師のように
土に乾いた指で
美しいものだけを造り出す
春の甘い黄昏にも
凍える冬のベッドにも
いつも同じ夢が降りて でも
感じる心はもう違うのでしょう
失くせるもの譲れぬもの
選びとっては
寂しさと諦め
植え込むだけなら
何処にあるかわからぬ
お城を探しつづけるの
きっと辿りつけると
からだ中泥だらけにして
涙と溜め息とで
来た道は沼地に変わって
後戻りはできないから
ずっと手を引いて
鏡のように静まった
闇夜の水面を覗けば
わたしたちの望むものの
すべてがきらびやかに
手招きしている
その向こうに行くというの?
何もかも捨て
まやかしに飛び込むほど
弱くはない
何処にあるかわからぬ
お城を探しつづけるの
けして辿りつけずに
胸が血だらけになっても
うろつく獣たちを怖れない
行けるところまで
いつか気づく
それは目には
見えないものだと
其処にあるかわからぬ
明日を探しつづけるの
きっと辿りつけると
からだ中傷だらけにして
さまよう獣たちの姿が
自分と知っても
哀れまないで
本当のふたり
まだ生まれてない