逝ける王女の肖像画
Takarano Arika
わたしの短い生涯のうちで
何よりも光満ち深く輝いたのは
ひとりの画家の
二つの星の瞳でした
どれだけわたしはその光に
照らされたでしょう
薔薇色の絹を 着飾るわたしは
三才の早春
初めて出逢った 長い髪の画家は
手にくちづけた
泣きじゃくるたび
あやすかのように
止まった絵筆 曲がる口髭
わたしは大人しく ひとり佇む
薄闇が降りるまで
五度目の冬は 銀色(ぎん)に包まれ
踏み出す再び 大きな絵の向こうへ
侍女らと共に ある日の午後が
幸福な永遠になる
夜空の紺色(ブルー)を
纏って澄ました
淑女の少女は 八つになって
それでも儚く狭い世界で
その目だけが 広い宇宙
二年が行きて
赤い衣裳(ドレス)の前で
画家は死んだ
人は知るでしょう
すべてのわたしを
あなたの絵の
中だけに