白堊病棟
宝野アリカ
まぶたをあけてなお闇ならば
夢の底に留まりましょう
この身覆う白い緞帳(カーテン)に
鮮やかな絵を描く
あなたのやさしい眼差し
見つめてください
この世にたった
ひとりで生まれてきた名もなき魂を
誰かがわたしにそっと触れれば
その指があなただと
信じられる強さだけが
わたしの真実だから
かつて零れた血の色もなく
戦(あらそ)いの地に萌える草
荒野より冷たいこの胸に
流れ出す哀しみも
いつか溶けるのでしょうか
迎えてください
この世でいまも
ひとりで消え入りそうに震える魂を
誰かがわたしに呼びかけるたび
その声はあなただと
想い続けられる力だけが
命を満たすの
探してください
この世でずっと
ひとりで生きることを覚えた魂を
誰かがわたしを抱き上げる時
その腕はあなただと
信じて待つ運命だけが
わたしのすべての光