月に向かって打て
Motohiro Hata
取り柄もない 人畜無害 目立たない役柄を
あてがわれたままに こなしてきたんですが
彼女もなし 実家暮らし 入社4年目の秋も
容赦のない 社会の荒波に流されていきます どうすりゃいい
文集に書いた将来設計を
急に思い出して ちょい凹んだりして
あの日のね 僕が描いた夢と 冴えない今じゃ 随分 違ってるけど
ねぇ ホームランは無理でも やってみるよ
もしかして出るかも ポテンヒットくらいは
神様の演出では 脇役は放置気味
あいつばかり 出世するのを横目に定時帰宅 うらめしい
晩秋の月夜 ビールのせいだ
ナイターを観戦中に涙ぐむ
いつかはね 僕も主役にきっとなれるはずと まだどっか信じているんだ
ねぇ 連敗続きのCクラス 打ってくれよ
命運 重ねて 祈り捧げる
観衆のはるか上を越えてく
白球に声が出て 親もあきれ顔
あの日のね 僕が描いた夢に 少しは胸を張れる自分でありたいな
ねぇ ホームランは無理でも 振ってみるよ
三振でもフルスイング 月に向かって