木の葉のスケッチ
Eiichi Ootaki, Takashi Matsumoto
時計は無言でまわるけれど
面影ばかりは消せないね
都会がくれた粋なはからいさ
ラッシュのホームで君と
冬の色の風に吹かれた落ち葉たちが
通りを走ってゆく
幸福みたいで ホッとしたよ
「まあね」と笑った横顔の
淡いかげがショーウィンドウに映ってる
ぼんやりみとれていたよ
時が刻む深い淵を
埋めつくせる言葉は無いんだね
つい「お前」と呼びかけそうさ
昔の口癖でね
話すことは山ほどあるはずなのに今は
話題も途切れたまま
時計に視線を落とすたびに
待ってる誰かを暗示して
都会がくれた罪な偶然さ
「食事はどう」って聞いた
立ち止まって 一瞬困った表情さ
じゃあ 引き止めて御免
枝を離れたふたつの葉は
風に散るしかない