群青
Shinji Tanimura
空を染めてゆく
この雪が静かに
海に積もりて
波を凍らせる
空を染めてゆく
この雪が静かに
海を眠らせ
貴方を眠らせる
手折れば散る 薄紫の
野辺に咲きたる 一輪の
花に似て 儚なきは
人の命か
せめて海に散れ
想いが届かば
せめて海に咲け
心の冬薔薇(ふゆそうび)
老いた足どりで
想いを巡らせ
海に向いて
一人立たずめば
我より先に逝く
不幸は許せど
残りて哀しみを
抱く身のつらさよ
君を背おい 歩いた日の
ぬくもり背中に消えかけて
泣けと如く群青の
海に降る雪
砂に腹這いて
海の声を聞く
待っていておくれ
もうすぐ還るよ
空を染めてゆく
この雪が静かに
海に積もりて
波を凍らせる
空を染めてゆく
この雪が静かに
海を眠らせて
貴方を眠らせる