首輪のない犬
和正 小田
もの憂げな町が
たそがれ色に染まれば
今日も黒いコートに
身をつつみ
流されるように
人ごみの中をうごいてゆく
頼りげないほほえみの中に
嘘をついている自分を見つける
なんの生きがいもない
なんの生きがいもない
わかっているくせに
愛することも自分
さえも信じられない
早く目をさませ 目をさませ
生きているんだから
かけがえのない今日だから
雨上がりの夕暮れの中に
首輪のない犬を見つける
今なら まだ間にあう
今なら まだ間にあう
涙が 流れている